東京郊外の文化住宅街のトイレ事情。
大正後期から昭和初期にかけ、住宅街が急速に形成された東京郊外では下水道の敷設がまったく間にあわず、河川への垂れ流しか「汲取り屋」と呼ばれる業者がトイレの汚物を回収していた。東京の市街地では下水道が敷かれ、水洗便所が早くから普及していたが、郊外地域の住宅地では汲取り便所がほとんどだった。...
View Article佐伯祐三「森たさんのトナリ」を拝見する。
先年、西銀座通りに面したShinwa Auction(株)Click!(銀座7丁目)の学芸員・佐藤様のご好意で、佐伯祐三Click!の『下落合風景』シリーズClick!の1作、1926年(大正15)...
View Article帝展会場で見合いをする田中比左良。
下落合の北隣り、長崎町荒井1832番地(現・目白5丁目)にあった中央美術社Click!から、1929年(昭和4)に「漫画六歌撰」と題した、おもに漫画や挿画を描いていた画家たちのシリーズ本が出版されている。選ばれている6人は田中比佐良はじめ、下川凹天、和田邦坊、細木原青起、宍戸左行、河盛久夫といった顔ぶれだ。...
View Article高圧送電線に沿って伝わった谷村怪談?
下落合の西南部や、南側に隣接する地域には、明治末から山梨県南都留郡(みなみつるぐん)谷村(やむら)に桂川電力が設置した鹿留水力発電所から、延々とつづく高圧線の送電塔を伝って電力が供給され、東京電燈Click!(現・東京電力)の目白変電所Click!で変圧されて、各家庭に電気が供給されていた。ほどなく、東京電燈は桂川電力を買収すると、この高圧線は東京電燈谷村線と呼ばれるようになる。...
View Article貯金が増えてうれしい「お化け大明神」。
前回は、下落合の南西部に電気をとどけていた東京電燈谷村線Click!を伝って聞こえてきた「八丁峠の女」怪談Click!をご紹介したが、今回は同じ山梨県の広里村(現・大月市)に設置された駒橋水力発電所から、駒橋線の終点である牛込の早稲田変電所界隈で、明治末から大正初期にかけて囁かれていた怪談をご紹介したい。ちなみに、この怪異譚が駒橋線沿いを伝って、大月あたりまで伝わっていたかどうかはさだかではない。...
View Article下落合に眠るか旧石器時代の土器。
いま、日本の旧石器時代がおもしろい。1949年(昭和24)の相沢忠洋Click!による群馬県の岩宿遺跡の発見以来、全国各地で続々と旧石器を産出する遺跡が見つかり、日本の歴史は一気に10万年前後(島根県出雲市の砂原遺跡は、放射性炭素年代測定=FT法により約11万年前の旧石器時代前期)にまでさかのぼることになった。...
View Article明治の女性画家を先駆ける吉田ふじを。
これまで明治末から大正期にかけ、女性画家の嚆矢として目白文化村Click!は第一文化村のすぐ北側、下落合1385番地Click!にアトリエをかまえていた二科の甲斐仁代Click!や、下落合の会津八一Click!があきらめきれずに追いかけた文展・帝展の渡辺ふみ(亀高文子)Click!については何度か書き継いできた。そしてもうひとり、下落合には女性画家の先駆けとして忘れてはならない人物が住んでいる。...
View Article子どもを食らう深大寺の仁王。
「仁王塚」と呼ばれる遺跡が、全国各地に散在している。そう名づけられた由来は、寺の山門にいる仁王像(金剛力士像)が阿吽の2体1対のため、よく似ている“左右”の塚墓だから「仁王塚」と呼ばれるようになった……とするものが多いようだ。もちろん、この名称は後追いの付会と思われ、「仁王塚」と呼ばれる以前から、左右で1対に見える双子のような塚(古墳)は存在していたのだろう。...
View Article上落合へ通いつづける杉村春子と『女の一生』。
1970年代の半ば近くだったろうか、わたしは高校時代に文学座の舞台で杉村春子の『女の一生』を観ている。どこの劇場だったかはまったく憶えていないが、両親もいっしょだったので、きっと誘われてしぶしぶ観に出かけたのだろう。...
View Article雑司ヶ谷の拝み屋は「もくず」といった。
その昔、「ガメラ」シリーズClick!と(大映)ともに、2本立て同時上映されていた作品に「妖怪」ものがあった。わたしが小学生のとき、いちばん印象に残っているのは『妖怪百物語』(1968年)というタイトルだ。そこに、8代目・林家正蔵が出演していて百物語を語る設定で、十八番だった怪談を披露していた。8代目・正蔵は晩年に彦六と改め、「正蔵」の名は林家三平が死去したあとの海老名家へ返上している。...
View Article情報が筒抜けだったF13の偵察写真。
米国の国防総省に保存され、前世紀末から米国国立公文書館で公開されている1944~1945年(昭和19~20)の日本本土の米軍偵察写真を参照していると、改めて都市や工業地帯、軍事施設などの詳細な情報が筒抜けだったことがわかる。地上の鉄道や車両はもちろん、歩いている人までがハッキリと精細に確認できる。これらの偵察写真は、B29を改造したF13偵察機Click!によって撮影されたものだ。...
View Articleどんど焼きの煙がただよう江戸東京。
子どものころ、親父がよく玩具を買ってきてくれたことがある。それが、アニメキャラクターのロボットやプラモデルだったら嬉しかったのだが、そうではないモノがずいぶん混じっていた。神奈川県の海辺Click!に住んでいたころのことで、ときどき欲求不満になると親父は地元の東京に出かけては、各地を徘徊していたものだろう。...
View Article