↧
円空仏が祀られた都内唯一の中井不動尊。
子どものころ、両親に連れられて円空仏を見て歩いた記憶がある。公開されている作品は東京都内には少なく、隣りの埼玉県や神奈川県のほうが多かったような憶えがある。もっとも、親父は鎌倉期から室町期にかけての仏師による仏教彫刻や武蔵野の石仏が好きだったようなので、それほど数多くの円空仏を訪ね歩いたわけではない。特に神奈川県には、平安期から鎌倉期にかけての鉈彫りのいい仏像が多い。...
View Article泳ぐと泥んこになる野方と落合の遊楽園プール。
明治末から大正期にかけ、東京郊外に「遊園地」Click!と呼ばれる公園が造られたことは以前にご紹介している。「遊園地」は、今日の遊園地とは異なり子ども用のアトラクションがあるわけではなく、花壇や温室のある庭園、釣り堀、プール、料理屋や宴会場Click!、ときに音楽堂などがある、大人も楽しめる文字どおり「遊」びの「園」だった。...
View Article落合・目白地域に集った名刀たち。
少し前、落合・目白地域にあった邸の、武具蔵に収蔵されていた美術刀剣について、その作品や技術の継承にからめ記事Click!を書いた。戦後、これらの邸にあった作品は各地の博物館や美術館に寄贈されるか、あるいは手放されて離散してしまった作品、戦時中に空襲で「焼け身」となったもの、さらに戦後は行方不明の作品(GHQにより持ち去られたか廃棄処分された)などなど、さまざまな経緯をへて現在にいたっている。...
View Article村山知義が好物のウナギとタヌキ。
村山知義Click!は、小学生だった10歳のときに父親を亡くし、家の働き手がいなくなって家運が急速に傾いている。したがって、彼の好物だった鰻丼を食べる機会は減り、誕生日とかクリスマスなどの記念日を除いては口に入らなくなった。...
View Article米軍から検閲と恫喝を受ける大田洋子。
1945年(昭和20)8月6日午前8時15分、蚊帳の中で寝ていた朝寝坊な大田洋子Click!の頭上600mで、B29「エノラ・ゲイ」から投下された原子爆弾が炸裂した。東京から郷里に疎開してきて、7ヶ月めのことだった。彼女はこの日から数日間、広島市街で目撃したことや起きたことなど、かつて見たこともない未曽有の惨状を、常に自身も原爆症におびえながらつぶさに脳裏へ刻みつけ、記録しつづけることになる。...
View Article下落合584番地の二瓶等と野口英世。
先年、行政機関の中でハンコ(印判)を使わずに業務を遂行しようとする動きが、国内外で話題となった。特に海外では、「ハンコってなに?」という疑問や興味とともに、「日本の行政では、FAXとハンコがないとワークフローを形成できない」と笑い話のネタにされ、特にネットでは世界じゅうのメディアで深刻なCOVID-19禍の中でも、かろうじて笑える数少ない話題として紹介されたばかりだ。...
View Article江戸東京地方を色濃く体現していた親世代。
東京の(城)下町Click!について、吉村昭の書いたエッセイ類が面白い……というか、とても懐かしい。うちの親父とはほぼ同世代であり、親父がわたしに話してくれた(城)下町の風情やエピソードと、多くの点でピタリと一致するからだ。...
View Article壺井栄にポカポカ殴られ蹴られる徳永直。
世の中には自分の意思や考え、感想などをハッキリさせず、モゴモゴとその場かぎりのおざなりで曖昧な言葉を並べているうちに、あれよあれよという間に物事が周囲に決められて迅速にコトが運んでしまい、にっちもさっちもいかなくなって呆然自失の態に陥ってしまう、優柔不断で情けない人物が確かに存在している。長編『太陽のない街』を著した徳永直が、そんな性格をした人物の典型だったようだ。...
View Article地図では目を白黒させてしまう目白学園。
大正から昭和にかけて、下落合の地図を年代順に眺めていると、少なからずモヤモヤしてくる一画がある。現代では地元で「目白学園」Click!と呼ばれることが多い、下落合西端の高台にある学校のキャンパスだ。...
View Article